第22号(平成26年9月号)
「脱法ドラッグ」から「危険ドラッグ」へ
厚労省、警察庁が、「脱法ドラッグ」という言葉を「危険ドラッグ」に変える、と発表しました。最近、「脱法ドラッグ」を使用したドライバーによる交通事故が相次ぎ、もっとこれら薬物の危険性を国民が実感するような呼び名にすべきということで、公募して決めたものです。
今、「危険ドラッグ」に対する関心が高まっていますが、私のところにも、先日、BSフジとBS日テレの時事番組への出演依頼がありました。両番組でキャスターの質問に答えながら、この「危険ドラッグ」問題の難しさを実感しました。というのは、女性キャスターから「どんな症状がでるのか、禁断症状は、死亡することがあるのか」などと何度も質問を受けたからです。
「危険ドラッグ」と、これまでの麻薬や覚せい剤などと大きく異なる点があります。それは、モルヒネ、ヘロイン、MDMA、あるいはアンフェタミン、そして大麻など、使用薬物が確定されていたのに対し、「危険ドラッグ」の場合、“何でもあり”だということです。
「危険ドラッグ」を、当初、販売者たちは「合法ドラッグ」と呼んでいました。麻向法や覚せい剤取締法、大麻取締法の規制外の「合法」的な薬物だ、という意味でした。
そこで、薬事法で「指定薬物制度」を作りました。すると今度は、個々に指定された薬物と少しだけ化学構造を変えた「脱法ドラッグ」になりました。そこで、次々現れる脱法ドラッグを、昨年二月と十二月に、基本構造が同じものは一括指定する「包括指定」としました。これにより、指定薬物は一気に1300品目を超えました。
ところが、それまで作る側では、化学構造や薬理作用が覚醒剤や大麻成分と似た薬物を探して「脱法ドラッグ」として出すことができたのですが、包括指定でそれが不可能になったことから“何でもあり”となったようです。
つまり、人に使用した場合、どんな作用が出るのか、全く分からない薬物を、乾燥植物末にまぶすなどして「ハーブ」と称して売り出し始めたのです。ですから、「危険ドラッグ」を使用するということは「自ら人体実験していること」だと言われます。
テレビのキャスターが、いくら「どんな作用が出るのか、禁断症状はあるのか」などと質問しても「答えようがない」のが、今の「危険ドラッグ」であるということ、「何が起こるか分からない」からこそ「危険ドラッグ」であるということを国民に理解してもらうことが第一の防止対策でしょう。
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