第10号(平成23年4月号)
デバイスラグ もとゆき会 顧問 今村 清
医薬品と医療機器は、「医療」という車の両輪であると言われています。前回のコラムに、「ドラッグラグ」の問題が取り上げられておりましたが、医療機器の場合は、「デバイスラグ」と言われ、全く同じような状況にあります。
欧米ではすでに承認されている最先端の医療機器が、我が国では使用できないという問題が、新聞等でも取り沙汰されました。承認審査を担当している独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)には、医療機器を審査する人員が35人しかいない(米国のFDAは、1,000人以上)ことも指摘され、平成20年12月に「医療機器の迅速審査化アクションプログラム」が策定されました。審査人員を、5年間で104名に増加するという計画です。これを実行するには人件費が増加するという理由により、前倒しで承認審査料等が大幅に値上されましたが、それから2年後のフォロ−アップ報告によりますと、確かに審査員の数は、大学院卒の新人を加えて59名に増えておりますが、肝心の承認審査期間は、前年度よりかえって長くなってしまいました。医療機器の専門家を増やさない限り、なかなか効果は現れません。
医薬品と医療機器は、同じ薬事法により規制されております。薬事法が制定された昭和35年当時は、医療は薬が中心であり、当時の医療機器(医療用具と呼ばれていた)は、単純なものが多く、同じ法律によりカバ−されていても別に問題はありませんでした。しかしながら、その後50年間に医療機器の発展は目覚しく、薬と機器の違いが明確になってきました。
これまで薬に関する大きな事故がいくつか発生したことを踏まえて、平成17年に薬事法が大改正されましたが、同じ薬事法に規制されているため、医療機器にとっては、違和感のある大きなひずみが発生してしまいました。例えば医療機器は、販売後もユーザの声を聞きながら絶えず改良改善を行っていくことによって進歩していくものであり、それにより安全性が損なわれることはありません。また医療事故も、製品自身の不具合よりは、使用法に関することの方がずっと多いことが報告されています。
日本の薬事法を手本としてきた韓国では、すでに独立した医療機器法が制定され、技術の進歩とともに、いまや韓国製の医療機器は、大きく世界に進出しております。日本は、一日も早く医療機器法の制定を図る時機にきております。 |