第20号(平成26年2月号) 特区制度による創薬ビジネス環境の整備
大阪医薬品協会理事長 植木明廣
諸外国では経済の成長エンジンとして特区を設け、新たな制度の導入や、従来の規制の効率化が行われています。日本では馴染みのない制度でしたが、平成23年12月に始まった国際戦略総合特区によって大きな効果があることが分かり、安倍政権は更に、国家戦略特区を開始する予定です。ここでは関西イノベーション国際戦略総合特区でのこれまでの成果を説明します。
T 関空における薬監証明手続きの電子化
製薬会社が治験薬等を輸入する場合、従来は、製薬会社が地方厚生局に紙の書類を持参又は郵送し、厚生局の輸入許可の印のついた書類を空港の税関に提出する必要がありました。関空特区ではこれを電子化し、承認も電子的に行い、承認の連絡が、厚生局から製薬会社と関空税関にメールで同時に到着するという仕組みが昨年3
月11日から始まりました。幾つかの特徴があります。
1.対象となる空港は関西国際空港(関空)だけに限定
2.製薬会社から近畿厚生局へメールで電子申請が可能。電子申請では電子的にチェックできるため、書類不備では送信できず、近畿厚生局が従来悩まされてきた書類不備の申請をなくすことが可能となりました。
3.この結果、紙申請では2〜5日かかっていた手続きが、電子では平均1時間ほどになりました。
4.電子化の結果、書類の保管や統計が簡便になりました。
5.電子申請は24時間可能ですし、関空税関の通関手続きも24時間可能です。更に関空の医薬品専用保冷庫の利用と相まって輸送の質と時間が効率化されました。
以上の効果が確認されたことから、厚生労働省は、早ければ本年10月より関空以外にも拡大し、全国で薬監証明手続き等の電子化を実施する予定です。
U PMDA-WESTの開設
昨年10月大阪梅田にPMDA-WESTが開設され、本年4月からGMP実地調査と相談業務がいよいよ開始されます。平成19年8月に大阪府知事、大薬協会長、大阪商工会議所会頭がPMDA-WESTの設置を要望して以来6年を経ての快挙になります。
PMDA−WESTについては、創薬の開発段階の効率化のため、GCP、GMP、GLPの実地調査と相談業務を行うことを求めてきました。今後、欧米のような効率的な実地調査と親切な相談が実施され、創薬の推進に繋がることが大いに期待されます。
V 税制優遇、金融上の支援措置、財政支援
過去2年間に合計43プロジェクトが認定されました。製薬会社には税制優遇と金融上の支援措置が、アカデミアには財政支援が行われています。
最後に、特区制度の更なる展開により創薬の推進と優れたビジネス環境が生まれることを期待しております。
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