第36号(平成30年8月号)
化粧品は日本を救うか
日本化粧品工業連合会 専務理事
山本順二
今、日本の化粧品産業は国内市場、海外市場ともに好調を続けている。昨年の国内出荷金額と輸出金額とは過去最高を更新した。その牽引役はメイドインジャパンの化粧品を求める訪日外国人である。日本で化粧品を購入した外国人が帰国後も日本の化粧品をリピート購入することで、国内のインバウンド売上と輸出によるアウトバウンド売上とが好循環を起こしている。インターネットを利用した越境ECの普及も輸出の増加に拍車をかけている。
日本の化粧品が海外の消費者に受け入れられている第一の理由は、品質や安全性の高さである。我が国の化粧品開発技術は国際的にも折り紙つき、高齢社会のニーズに対応した高機能製品はアジアだけでなく欧米の消費者にも注目されている。メイドインジャパンの化粧品に対する海外市場の信頼は私達の想像以上のものがある。
人の肌に直接、使用する化粧品では消費者の信頼を得ることは何よりも重要なことだと思う。さらにいえば、日本の化粧品に対する高い評価は、製品そのものの品質や安全性だけでなく、いささか手前味噌だが、日本の化粧品産業、ひいては日本に対する信頼によるところも少なくないと信じている。多少の例外はあっても日本人の几帳面さや誠実さには定評がある。それだけで商売がうまくいくほど世の中は甘くないという声も聞こえてきそうだが、信頼関係は商売の大前提ではないだろうか。
現在、日本の化粧品を最も多く購入してくれるのは、海外では中国の消費者である。中国の化粧品市場は米国に次ぐ世界第二位の規模で、日本をはじめ、欧米、韓国等の化粧品企業が熾烈な競争を続けている。中国市場は世界の化粧品産業にとって魅力的だが、同時に、その時々の政治状況に大きく影響される等さまざまなリスクもはらんでいる。このような市場で日本の化粧品が広く受け入れられているのは大健闘といってもいいのではないか。今後の日中関係を予測するのは難しいが、両国の関係が順調である限り、日本の化粧品の売上も好調である。いうなれば化粧品は日中関係のバロメーターである。もちろん、日中二国間に限らず友好信頼関係がなければ化粧品の国際貿易は成り立たない。あえて我田引水のそしりをおそれずにいえば、化粧品が日本の信頼を高め、良好な国際関係を保つことに少しでも役立つこともあるのではないか。化粧品産業に携わる者の真夏の夜の夢である。
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